木箱に入れられた桜貝

孫へのプレゼント

幼少時代、夏休みはいつも父方の祖父母の家で過ごしていました。

海から近い場所にあったこともあり、海水浴やスイカ割りをするのが楽しみだったのですが、最も熱心に行っていたのは美しい貝を拾い集めることでした。
中でも薄い桃色をした桜貝は私のお気に入りで、姉と一緒に競うように拾ったものです。

そうして大切に持ち帰った桜貝は砂を落とす為に真水できれいに洗い、割れないよう気をつけつつティッシュペーパーで優しく拭きました。

乾いた桜貝はお菓子の空き箱に入れておき、何度も蓋を開けては眺めて楽しみました。夏休みも終わりに近くなった頃、海水浴から戻ると私の名を呼ぶ祖父の声が聞こえました。

何事かと行ってみると祖父からとても美しい細工の施された木の箱を手渡されました。心をときめかせながらゆっくり開けてみると、中には私達が集めた桜貝が整然と並べられていました。

桜貝は動かないよう固定されており、お菓子の空き箱の中に入っていた状態よりも数段輝いて見えました。

祖父は私に姉も呼ぶように言い、やってきた姉の反応を二人で楽しみました。

桜貝の入った木箱は祖父の部屋に大切に置かれ、夏休みになるたびに私と姉は飽きずに見て楽しんだものです。

時は流れて祖父母がこの世を去り、今はあの木箱がどこにあるのか分からなくなってしまいまいましたが、後にも先にもあれほど素敵なプレゼントはなかったと思っています。