私が18歳の時、大工を目指して父について修行を始めた頃、今は亡き祖父から古いノミ一式を譲り受けました。
祖父は腕の良い大工でしたが、腰痛で仕事ができなくなり、私が中学生の頃には既に引退していました。
無口で、感情を露わにすることは父と同様ほとんどなく、私も長時間話した記憶がないのですが、「大切な道具をくれるってことは、すごく喜んでるんだよ」と父に言われました。
ノミ一式は大変古いものですがよく手入れされており、その使いやすさに驚きました。日焼けした年季の入った木の持ち手から職人のオーラを放っているようでした。
このノミを自在につかえるような一人前の大工に早くなりたいと思いました。
祖父が現場に出てくることはほとんどなかったので、いつか自分の仕事を見てもらいたいと思いつつも月日は流れていき、私が26歳に祖父は亡くなってしまいました。
その頃には様々な大工道具をやっと一人で扱えるようになっていたのに、普段のコミュニケーション不足をとても後悔しました。
祖父から譲り受けたノミ一式はもちろん今も大切に使い続けています。
祖父ほどの腕前になるにはまだ遠い道のりですが、大工を目指す私を歓迎してくれた祖父お期待に答えられるように日々腕を磨きたいと思います。

