「手編みのマフラーがほしいな。」
クリスマスプレゼントは何がほしい?と尋ねた私に彼がこう答えたのが、きっかけだった。
今までマフラーはおろか、編み物を全くしたことがなかった私だったが、一つ年下の学生、普段控えめで、あまり自分の主張をすることが少ない彼が、初めて自分でリクエストしたプレゼントに、一念発起しようと心に決めたのだ。
毛糸の色や質感は大手百貨店に出向いて彼と一緒に慎重に選んだ、直接肌に触れるものになるため、彼にとって肌触りの良いものを選びたかったのだ。
結局選んだのはアルパカの毛で作られた赤色の毛糸だった。
そこからは行動が早く、早速図書館へ行き編み物に関する本を大量に借りてきた。
平日は遅くまで残業のある仕事だったため、帰った後、寝る間を惜しんで毎日1~2時間毛糸と格闘をしていた。
決して楽な作業ではなかったが、彼の首に巻かれるであろう赤いマフラーを何度も想像しては幸せなモチベーションを得ていた。
そんなある日、電話口で彼がこう言った。
「就職先、九州が本社の会社に応募しようと思うんだ。決まったらしばらくは遠距離になるかもしれない。」
衝撃的な言葉だった。
普段から就職したら一緒に都心に住み、ゆくゆくは結婚を、と話していた彼だったので、この心境の変化に驚きを隠せなかった。
二人の将来は?などいくつもの疑問符が浮かび彼を問い詰めたが、今は就職活動と勉強のことで精一杯で深くは考えられないと告げられた。
悲しみと怒りがごちゃごちゃになり、そして私は半分まで進んだマフラー編みをボイコットした。
クリスマスまであと2週間、寒い冬の夜だった。
ボイコットを始めてから5日目、その間友人や母親、色々な人に相談して気持ちの整理がついてきた頃、彼から長い謝罪のメールをもらった。
自分のことばかりで申し訳ない。でも二人の事について真剣に具体的に考えていきたいから時間がほしいという内容だった。
実際私も反省をしていた。
まだ学生の彼に二人の将来を考えろなんて、忙しい今の時期にとても酷な話だと思い直したのだ。
やっとやりたい事が見えてきた彼を、私が応援してあげなければ、何のために一緒にいるのか分からないと感じた。
その晩仲直りをし、私はマフラー編みを再開した。
しかし、クリスマスまで、あと1週間しか残されていない。私は急ピッチで作業を進めた。
そしてクリスマス当日、そこには照れ笑いを浮かべ嬉しそうににマフラーを巻いた彼がいた。
マフラーの赤色が、彼の白い肌によく映えてきれいだった。
これからもずっとこの笑顔を大切にしたいと心から思えた、プレゼントの思い出だった。

