数年前に、高齢の祖父が老衰で入院し、自分で体を動かせないような状態になりました。
また、ずっと長年、耳が遠く、いわゆるひどい老人性難聴で、外国製の電子制御の補聴器をつけていないと聞こえない状態でした。
そしてその頃は、補聴器をつけても聞こえにくくなり、耳の横で大声で怒鳴るように言わないと聞こえなくなっていました。
個室とはいえ、病院なので、特に夜間は大声が出せないのです。
付き添いに行っても、声掛けも充分できずにいましたが、ある時、小学生の子ども(祖父からは孫)が、「掃除機のパイプの部分を使って、こちらの口とお爺ちゃんの耳のところに漏斗(ろうと)のような形のものを取りつけて、そこでしゃべり、片方をお爺ちゃんの耳に当てたら聞こえるかもしれない。」
というので、やってみました。これがうまく行きました。
聞こえたのです。
そして声が案外、外にはあまり漏れません。
ふと思いついて、昔流行った曲の歌詞の本を買ってきて、祖父がカラオケで歌っていた歌を思い出して、歌ってみました。
最初に歌ったのはお座敷小唄でした。
戦後、東京で会社をしていた祖父は、接待でよく料亭へ行っていたそうです。
すると、祖父が小さな声で歌を口ずさみはじめました。途中で、「聞こえるのね。」というと、小さな声で、「聞こえる。」と言いました。
感情が揺さぶられたのか、目が動いてとても嬉しそうでした。
それから2時間余り、いろいろな曲を歌ってあげました。
時々、歌っている歌手の名前や昔の話も話しながら。
それからは付き添いに行った時は、昼でも夜でも、こうして病室が、カラオケパーティーになりました。
祖父への歌のプレゼント。
これが最後のプレゼントになりましたが、今はもう懐かしい思い出です。

