故郷の家に咲いていた赤いばらの話

母親へのプレゼント

その頃私は山口県で携帯電話の店を営んでいて、九州にいる両親とはずっと離れて暮らしていました。
ですが、母の日に母が好きな赤いばらを贈るのが私の毎年の恒例行事。

日々の忙しい仕事の中でなんとか形だけでもと軽い気持ちで始めたのですが、そのことが後に以外な結果を生むことになったのです。

ある年の秋、母から電話がかかってきました。「あなたが毎年送ってくれるばらねぇ、あれ、今庭で大きく育ってもう背の高さくらいになったのよ、それでいっぱい赤いばらが咲いてきれいよ。
お父さんが一所懸命世話してくれてるから」

「ああ、そう、よかったねぇ」と答えましたが内心はとてもびっくり。
本当は半分お付き合いのつもりで贈ったプレゼントなのにそんなに大切にしてくれてたなんて思いませんでした。

父の母に対する愛情が伝わってきます。

そんな母からの電話があった日から十数年の時が流れました。
母は今年83歳、父は86歳です。実家の家は築50年以上も経ち老人2人には家の手入れが大変だという事で売りに出し、取り壊されました。

あの、母や父の愛情がそして私の思い出が詰った赤いばらはもうありません。

年老いた父と母は現在老人ホームで静かに生活しています。

時の流れとはなんと残酷なものでしょうか?

そして時はそんな人達の気持ちには関係なしに、知らん顔をして通り過ぎて行きます。